お盆は片手のほうが持ちやすい、と知った21歳の夏

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イラスト:いらすとや

 オーストラリアに1年間住んで、僕の中の大小さまざまな固定観念がプチプチと音を立てて潰されていったのですが、今日はその中のエピソードを1つ。全然オーストラリアっぽくない話なんですけど。
 あまりに小さなエピソードにつき、ワーホリ体験記(3万字ありますがぜひ!)には書ききれなかったので、ここに書いておきます。

ワーホリの部屋/ワーホリ体験記INDEX
オーストラリア、シドニーのワーホリや留学の体験談。その質・量とも群を抜いています。一本一本が短編小説くらい長いのですが、その分、個別のトラブルやブレイクスルーの情況が詳細に書き込まれていますし、心の揺れや考え方の変化まで細かくわかります。単なる予定調和のサクセス・ストーリーではないです。失敗談もかなり含まれているし、ま...

 日本食レストラン(通称ジャパレス)でバイトをしていた時の話なのですが、キッチンでできた料理をお客様のいるテーブルまで持っていくのが僕の仕事でした。
 効率よく料理を運ぶため、一度に定食3人分やラーメン4杯をお盆に乗せて運ぶことが多かったです。
 それまでホールの仕事は一度もしたことがありませんでしたが、自分なりに工夫して頑張っていたつもりでした。

 仕事を初めて1か月くらいたったある日、いつものように料理を運んでいたら、店長(日本人)に引き止めらてお盆の持ち方を注意されました。
 僕は両手を使って、胸の前でお盆を持っていたのですが、店長は「お盆はこうやって片手で持つものなんだよ(図参照)。そうやって両手で持ってるのは、見ていて怖い」というのです。

 それを聞いて僕はイラッとし、「そんなわけない!」と思いました。だって1点で支えるよりも、2点で支えた方が安定するにきまってるじゃないですか。片手よりも両手で支えた方が2倍も力が入るじゃないですか!

 反射的に思ったことを言ってしまったところ、店長はムッとした顔をして(当たり前ですね)、こう反論しました。
 「いいか? 世界中のウェイターが、何百年もこうやって片手で持ってるんだよ。それが片手の方がいいってことの証拠なんだよ。今更お前が革命起こせるわけないだろ?!」

 「くっそー!コノヤロー!何だよその言い方はー!!」と心の中でムカッとしましたが、言ってる内容はあまりに正論だったので、とりあえず「はい、分かりました」と言って足早に次の料理を取りに行きました。
 不服ながらも、早速お盆の片手持ちに挑戦したところ、やはり最初は慣れませんでした。「ほらやっぱり両手のほうがいいんだよ」と思いながら、店長がまだ近くにいたので、しぶしぶ片手持ちを続けること15分。自分でもびっくりしたのですが、なんと慣れると片手で支えたほうが圧倒的に持ちやすいのです!

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 理由はいくつかあって、1つは「重心の下を持っている」という安心感でした。重心の下を持つとやじろべえみたいな感じになるので、左右でバランスをとれて結構安定するんですね。一方で両手持ちというのは、結局は力任せなので、この安定感は得られません。
 あとは、両手持ちだと握力だけに頼ることになってしまうですが、片手持ちだと重心の下を腕全体の力で支える感じになるので、かえって力を入れやすいです。

 店長にちょっぴり感謝し、「はぁ、これは楽ちんだ。そりゃ世界中の人がみんなこうするわけだなー」と、自分も一人前のウェイターに仲間入りした気分で、ちょっと胸を張って料理を運べるようになりました。大人の話は聞くもんですね。ほんとに。

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この記事は旧ブログ「ワーホリ中」からの転載です。

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