裁判の傍聴に行ってきました 2018
3月某日に裁判の傍聴に行ってきました。
前置きはなしで、早速裁判傍聴した感想に入りましょう。
(3年前に裁判傍聴したときの感想文も、ご一緒にどうぞ)。
① 傷害事件を起こしたおじいちゃんの刑事裁判
感想:加害者(Aさん)と被害者(Bさん)による状況説明の食い違いが印象的。
検察官がBさんに話を聞いたところ、事の顛末は以下の通り。
- アパートの共同浴場で、AさんとBさんが口論になった。BさんがAさんを押し倒し、Aさんはその場で数分間意識を失った。
- そのあと、2人はそれぞれ自分の部屋に戻った。
- BさんはAさんが頭を打ったことを心配し、オロナインを塗るためと謝罪のために、Aさんの部屋に行った。
- 2人はAさんの玄関で少し話をしたところ、Aさんは突然包丁をBさんの胸に突き刺した。Bさんは後ろへよろめいた。
- Bさんは追撃を避けるためにドアを閉め、管理人の部屋に急いで向かった。
- 管理人はBさんのシャツが血で染まっているのを見て、警察へ通報した。 検察によるとBさんは「自分が押し倒したのがきっかけなので厳しい罰を望むわけではないが、相応の処分をしてほしい」と言っている。
そのあと、加害者のAさん(70歳くらいのおじいちゃん)が、弁護士の質問に答える形で、事件の状況を説明していく。自分の印象としては、Aさんは(こう言っては悪いけど)少しみすぼらしい感じの服装で、話し方もおどおどしている感じだった。
Aさんによると、Bさんの話と異なる点は以下の2点。
★BさんがAさんの部屋に訪れた際、とても謝罪をする様子はなかった。BさんはAさんの部屋の中を見て「なんで部屋の電気がついてねえんだよ」などと挑発するような口調だった。Aさんは「Bさんはけんかの続きをするために、わざわざ部屋まで来た」と勘違いした。
★Aさんは突然包丁でBさんを刺したわけではない。一度果物ナイフをBさんの目の前に掲げることで、「俺はナイフを持っている。だから早く帰れ」ということをアピールした。それでもBさんは全く去る様子がなかったので、Bさんの胸を刺した。
この話を聞いていた感想としては、根拠はないけど、Aさんはとても嘘をついているようには見えなかった。多分だけど、2人の話の食い違いに関しては、Aさんの言うことが本当だという気がする。Bさんは嘘こそついていないものの、自分にとって都合の悪い部分はかなり端折って説明していたようだ。でも、裁判には黙秘権があるのと同じように、言いたくないことは言わなくてもいいので、しょうがないのかなと思う。
その後もAさんは弁護士からの質問に答えた。以前もカッとなって事件を起こしたときの反省をふまえて(今回の事件は釈放から3か月後のこと)、最初の口論でカッとなったけど気持ちを抑えて部屋に戻って寝ようとした。その時にBさんが来てしまったというタイミングが悪さについて述べていた。また、あらかじめマンションの管理人に「けんかはだめだ」と言われており、とにかくBさんに早く去ってほしかったという気持ちが強かったと述べていた。
判決の言い渡しは後日なので、その後のことは分からない。しかし、おじいちゃんは頼れる身内や親戚もおらず、今回の事件を起こしたことで生活保護を打ち切られるらしい。あのおじいちゃん、これから一体どうするんだろう。
② 判決言い渡し後の、弁護士による被告人のフォロー
刑事事件の判決言い渡しは、5分~10分で終わります。裁判官が判決文を読み上げるだけだからです。判決文には事件の概要が含まれているため、おおよそのあらすじはそれを聞くだけでわかります。また、判決の理由として「○○(起こした事件/事故)に関して罪は大きい。しかし××(反省しているなど)に関しては考慮すべきである。よって総合的に判断して、刑は・・・とする」という流れなので、事件/事故の中の争点についても理解することができます。
さて、とある交通事故の判決言い渡しを聞き終わったあとのこと。トイレに行ってからエレベータで1階へ降りていた時、自分が直前まで傍聴していた裁判の被告人+家族+弁護士とエレベータ内で一緒になりました(千葉で裁判傍聴したときと同じだ…)。
その裁判の判決は、懲役1年 執行猶予3年でした。
弁護士は被告人の男性(20代後半くらい)に「3年以内に事件や事故を起こすと、1年の懲役が確定しちゃうから、3年間は車を運転しないようにしてね」と優しい口調で、でも強く念押しをしていました。母親は「どれくらいの事故で刑が確定してしまいますか」と聞き、弁護士は「事故の大きさにもよりますけど、交通事故なら物損でアウトになることもありますよ」といい、被告人は「そうですか…」と落ち込んでいるようでした。
狭いエレベーター内に一緒にいて感じた空気としては、あの場に弁護士さんがいるから、あの家族はまだ助かってるんだろうなと思いました。判決の言い渡しという、これからの生活の大変さが具体的にわかったブルーな状況の中で、「この人の言うことを聞けば大丈夫」という頼れる人がいるのは本当にデカいと感じました。
③ 自転車に乗っている学生と接触事故を起こした運転手の刑事裁判
感想:人間の気持ちの弱さを正論で攻める検察官がきつい・・・
事故の概要
- 信号を右折した車が、横断歩道を渡っていた自転車(大学生)に気づかず接触事故。大学生は自転車から転倒した(のちに骨折していることが判明)。
- 運転手は車を停めて大学生にもとに駆け寄り、「大丈夫ですか」と声をかけた。大学生は「大丈夫です」と返事をした。その場で2人は1分ほどやりとりをした。後ろに車が詰まってきたこともあり、運転手は「本人が大丈夫と言っているから大丈夫だろう」と判断し、車に戻って仕事へ向かった。
- 運転手は自分を戒めるために、翌日事件の現場へ向かった。そこで「加害者を探しています」という看板を発見。コトが大きくなっていることを知り、責任を感じて警察へ出頭した。
- のちに大学生の父親が運転手に対して民事訴訟を起こしたが、運転手はネットで「民事訴訟は取り下げが可能」という情報を読み、大学生の父親に起訴を取り下げるよう直接連絡をしてしまった。大学生とその家族はそれを聞いて恐怖を感じ、両親の意向で大学生は引っ越しをすることにした。
被告人の運転手に対して、検察官のツッコミが厳しかった。検察官は正論で、反論や言い訳のしようがない質問だった。
- 大学生と接触事故を起こしてしまった直後、なぜ自動車学校で習ったような救護措置を行わずにすぐに去ってしまったのか?
- 大学生と接触事故を起こしてしまった直後、なぜすぐに警察へ出頭しなかったのか?
- 事故当日に出頭しなかったが、せめて翌日にでも出頭するべきではなかったのか? 事件現場で看板を発見したのがきっかけで出頭したが、もし看板がなかったら出頭しないつもりだったのか?
- 大学生の父親に民事訴訟取り下げを申し入れたことが、相手に余計な心配をかけさせる行為だとなぜ気づかなかったのか?
- (被告人の「訴訟取り消しが可能とネットで調べて見つけた」という発言に対して)ネットのその情報に、執筆者や責任者の表示があったか確認したか? ネットの情報は玉石混交ということは知らないのか?
被告人もすごく真面目な性格なのだろう。なんとか質問に答えようとしていた。が、全く答えになっていなかった。
被告人を正当化するつもりはないけど、そういう行動をとってしまう気持ちはすごく分かる。というか、自分でも同じことをしてしまうと思う。どうしても、逃げたくなってしまう。
検察官の言うように、本当は出頭するべきなのはもちろん分かっている。
でも、もしかしたら大学生はちょっとケガをしただけで、大したことないかもしれない。ワラにもすがる思いで、自分のやってしまったことが小さなことであると祈るのだ。
もしかしたら大学生やその両親が加害者を探しているかもしれないけど、「あの事故は大したことなかった」と言い聞かせる。
布団を頭までかぶって、自分の気持ちや周囲のドタバタが落ち着くまで隠れるのだ。実際、警察沙汰にならないような小さな事故なんて山ほどあるじゃないか。あの事故も、きっとその中の1つなんだ。
検察官も、当然被告人がそのような分かっていると思う。あくまで予想だけど、被告人に反省を促す意味で、あえて厳しい質問をしたのだと思う。本人は当然反省しているが、ここはさらにもう一歩踏み込んで追い打ちをかけることで、「自分で反省したからもう大丈夫」と甘い考えまでも断ち切らせるのだと思う。「裁判はこわい」と身を持って思い知らせることで、結局は本人のためになるのだと思う。実際、自分も検察官の質問攻めは見ているだけで怖かった。もしも自分が事故を起こして誰かを怪我させてしまったときには、あの裁判の様子を思い出すと思う。
裁判の感想は以上になります。こうやって自分が書いた感想を読むと、いずれも加害者側に共感していますね。刑事事件なので被害者はその場におらず、加害者だけが法廷にいます。おそらく、目の前にいる人に対して気持ちが同調してしまうのでしょうね。